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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
ボールが小気味よく弾み、選手たちが躍動し、そこに声援が飛び交う。
城平高校対長商学園のバスケットの試合。場所は、市営体育館。地区予選の三回戦だった。
後半に入り、既に点差はダブルスコア。名門校の猛攻に、守勢の城平はビハインドである。素人目にもその実力差は明白――だが。
ダダダ――――ガシャン!
コート外に出ようとしたボールを追い、一人の選手が自陣のベンチへと突っ込む。
「――!」
並んでいたパイプ椅子を蹴散らすように、倒れ込んだのは――堂林亮伍。
そこに駆け寄ったバスケ部マネージャー――海藤美和は、心配でその表情を曇らせた。
「亮伍!」
「ああ? くっそぉ……」
「大丈夫? 怪我は――」
そう言って差し出された美和の手を振り払い、亮伍はムクッと立ち上がる。
「平気だよ」
「だ、だけど――」
「平気だっつてんだろ!」
猛る亮伍は、コートに戻ろうとして――だが、立ち止まると背中を向けたまま、美和に言った。
「だから――そんな顔すんな」
「う、うん……」
試合再開――。
しかし、それからも城平の苦戦は続いた。
去年チームを躍進させた立役者。瀬山宗助の姿は、此処にはない――。
それでも、亮伍は闘志むき出しの全力プレー。チームメイトたちを鼓舞してゆく――。
「亮伍……」
その姿が、美和の胸の中を熱くさせる。
だけど……今は……。
美和は溢れ出そうなものを、グッと堪え。そして、想いの丈を腹の底から絞り出した、その声へと託した。
「亮伍ぉ――ガンバれぇーっ!」