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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
『希望は高く』『夢を抱け』――と、大人は頻りに言うのだろう。
それらはとても耳障り良い、言葉たち――だ。
だが、大人は決して語ろうとはしないの、だろう。
希望が叶わず、夢が挫かれ――その先の物語、を。
多くの砕かれた無数の想いの星屑の中で、選ばれ勝ち抜いた稀の恒星が眩く輝く。
しかし、時に――砕け散った星屑こそ、それはそこはかとなく美しいのだと、胸を打つ。しかしそれも、残酷さの裏腹なのかもしれない……。
今、コートをひた走る少年は、一心にボールを追い続けるから。詰まらなく小難しい理屈など、彼の中に割り込む余地はなかった。
とはいえ別に、何も思わない訳もない。彼は既に、適わない相手を知り。自分の立てない境地だって、思い知っている。
だが――
「まだだっ――!」
彼は抗うことを、決して止めようとはしない。
諦めて悟ったつもりになるのは、嫌だから。抗い続けてそれ故に、粉々に砕かれてしまったとしても。
その後に見る景色は、やはり違うと――心の片隅で、そう信じるから。
そして、少女は――そんな少年を見つめる。
「亮伍……」
胸を熱くさせる想いの、その正体に彼女はもう気づきながら……。
でも、大切なそれを今は秘めて、そして彼女はその姿を――潤んだ瞳に焼きつけてゆく。
試合時間は――残り一分。
勝負は決したのだと、誰もが言ったとしても。
「私……ちゃんと、見てるよ」
亮伍が抗うのなら、美和も一心にその姿を追った。
何れ――美和の想いが、亮伍の心の支えになる時が来る。
でもそれは、試合終了の笛の音の――また先の物語であろう、か。