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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
彼女の本質は、基本的には屈託がなく天真なのであろう。
だが、奔放で好奇心旺盛な少女は、本能の赴くまま周囲を顧みないことも度々。それ故に、妙な誤解を生じさせたりもして。周囲からは、計算高くあざといトラブルメーカーとして、認識されたりもしている。
市原茜はいつでも、ふんわりと笑うから。人は彼女の心の傷には、気がつきにくいのも無理もなかった。
一度、人と交わるのなら、そこには情が生まれる。それはまだ、普通のことであろう。しかし、人一倍に情が深い彼女にしてみれば、時にそれらを他の感情と取り違えてしまっていたのかもしれない。
市原茜は――優しい少女でも、あるのだから。
ある日の、放課後。閑散とした校舎に、何となく居残ると。珍しく茜は、物憂げに廊下より窓の外を見渡していた。
「うーん……なんだろ。この感じ……?」
ポツリと呟く。
暫く前には、付き合っていた大学生と別れ。仲間内の男子との間にも、トラブルの火種を抱えたりもしているのだし。ようやく見つけた淡い恋にも、急転直下型に破れてしまった。
なんとなく、満たされない。そんな想いが、確かに彼女の中にあった。だけどそれは、何時だってそうだったようにも、思えている……。
「あの――」
ぼーっとしていた茜はその声を耳にして、ようやくすぐ側に人が立っていることに気づく。
「ハイ――?」
キョトンとして顔を向けると、そこには見知らぬ男子生徒の姿があった。