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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
だが、彼はその戸惑いを振り払うと、今度は茜の顔を見据えて――告げた。
「先輩のことが――好きです」
あ――! やっぱ、そうだよ。
「通学中に見かけて……僕、ずっと気になってました。先輩は、いつも明るく笑顔で……だから、僕……」
私って――こんな風にちゃんと「好きだ」って言われたの、これが初めてなんだ……ね。
自らの記憶を辿ると、茜はそれに気がついていた。
若くしながら、重ねた奔放な恋愛。しかしその中にあっては、それは決して得られなかったもの――。
そう、知った時に――
「アハッ――アハハハハハ!」
茜は去来してしたものを、その笑顔へと託していた。それに反するように滲んだ涙を、悟られぬようにそっと拭いながら……。
「……?」
笑い出した姿に、彼と呆然としているから。
「フフ、ゴメンね。笑ったりして」
「いえ……」
茜はそう詫びると、柔らかな表情を少しだけ引き締めた。
「でもさ、やっぱ困るよ。私、キミのこと――全然、知らないんだもん」
「そうですよ……ね」
水を失った花が萎れるように、またしても頭を垂れる、彼。
それをくすっとした微笑で見つめ、茜は言った。
「だから、まず――友達になろっか」
「はあ……?」
「あ、待って。やっぱ、こんな言い方じゃダメだ」
茜は右手を差し出すと、今度は自らそれを乞う。
「私と――友達になってください」
「も、もちろんです!」
握り返された、その手の温もり。その些細な熱と小さな胸の鼓動――。
それだけのものを、今。茜は大事にしようと、そう思う。この細やかな想いがどうなるのかなんて、誰のもわかりはしないけれど。
少なくとも、この先は――そうしてみようと決めた。
そうした出会いもあるから、一方で訪れているのは――別れであるのかもしれない。
それを語るため、風はまた別のシーンへ――。