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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
病院より家に戻って、それから更に三日ほど。
喜嶋三生は学校を休むと、その大半を自分の部屋で過ごしていた。
「……」
じっと見つめた、包帯の巻かれた――左手。それは、じきに治るだろう。
そうしながら、三生が見つめようとしたのは、もう一つの傷であったのかもしれない。
「心配かけて、ごめんね……」
あれから、この日まで。三生はその言葉を、両親に何回言ったことだろう。
だが、それを何万回言っても及ばない心配を、自分はかけてしまったのだと、その度に感じたものだった。
人は誰しも間違うものだから、誰も三生のことを責めたりはしない。思いやりは、しても。だからこの心穏やかな時間に、三生は自分で自らを責める必要を感じていた。
だけど、それは飽くまで――これから先の自分のため。だから、三生は傷を見つめる。
だが、彼に大きく影響を及ぼした、彼女――赤緒礼華との間には、既にわだかまりはない。否、それは彼の中に、初めからなかったのだろう。
だから、三生は責任を感じたであろう礼華に、優しく接することを迷いなく選んでいた。
「……」
そして、三生は想い――考える。
色々と間違えたのは、確か……。でも、決して全てを間違えた訳ではないのだろう、と。
少なくとも、誰かを好きになる気持ち――それだけは。
それがわかるから彼は、自分の内なる傷を、正しく見つめることができている。