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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
 喜嶋三生は、何時しか自分を卑下して生きるのが癖になっていた。それは、哀しい悪癖と言えよう。

 どうせ、自分なんて――と、そんな風に自虐的なセリフを口にできる人は、彼からしてみればかなりましだとさえ思えていた。真に自信が無い訳ではないから、他人の関心を引こうともできる筈だ、と。

 三生はそうすることもできずに、自分が他人の目に触れることさえも、恐れてきたのだった。


 礼華との一件の始まりは、互いの事情が齎した正にアクシデントと言える。その衝撃が強烈過ぎた故に、その時に生じた想いは暴走し――やがて、滑落へ。

 だが一方で――人を好きになったとした実感が、彼を高揚させたのは紛れもない事実である。そして、それを得た時に、三生は過去のそれとは違う、自分自身を見つけていた。

 だから――


「また、いつか……今度は、もっと……」


 彼は、そっと呟く。その実感を大切に、その胸の中へと仕舞って――。


 控えめな性格は、彼の美点でもある。自分ではそう思えなくとも、そう気づいてくれる人たちはいる。自分は恵まれないのだと思うから、また人の傷も知ることができた。

 でも、癒し方の知らない傷を隠していても、やはり報われることは少ないから……。


 喜嶋三生は少しだけ、強くならなければならないのだと――思っていた。
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