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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
長く闇に身を落としてきた少女は、その精神を自ら解放して新たな歩みを始めていた。
『女帝』――それは、期せずして耳にした、字。その本名は――赤緒礼華。
――とは言え、何もかもがドラマティック且つ、劇的に変化するものではないのだろう。殊に取り巻く環境というものは、そうだった。
映画なら、その心情が最高潮を迎えた場面で、そこにエンドマークを穿つことができる。例えば、紆余曲折があり葛藤を乗り越えた男女が、美しく結ばれた場面に於いて幕を降ろせばいい。
だがそれが現実であると想像するなら、そこには描かれない続きがある。絵にならない、どうしようもない日常が、その最高潮の後に必ず訪れるのだ。
まして、礼華は未だ大きく報われた訳でもなく。言ってしまえば、捉われていた過去から、抜け出したに過ぎないのかもしれない。
そんな彼女が先に進む為には、今置かれている環境の中で、幾つかの足枷を取り去る必要を感じている。
当面、その一つは、既に体を成さない、その家庭の中に転がっていた。
「……」
暫くぶりに家に帰った礼華は、居間で酔いつぶれる父の姿――冷たい瞳で、見つめる。