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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
「なんだ……帰ったのか?」
首だけを傾けると、父は面倒そうに、そう言った。それは、取るに足らない何時もと同じ反応である。以前、それに失望し尽くしていた礼華からしたなら、一瞥して黙殺すべきものに過ぎない……。
だが――
「――!」
今――礼華は、ギリリと奥歯を噛み鳴らすと、そのぞんざいな無気力に激高しようとする。否、無理にでも、そうしようと――決めた。
靴を乱雑に、脱ぎ去り――。鞄を放りつけ――。
ツカツカと父に迫るや、まだ寝転がったままのその身体に、躊躇なく馬乗りとなる。
「れ……礼華?」
唖然と礼華を見上げる驚きを表した顔――それを、無表情に見据える、と。
ポカ――ポカ――!
その胸板を目がけて、握り締めた拳を一つまた一つと打ち下ろしてゆく。それは強打するものではなかったが、まるで封印された怒りをゆっくりと解放するが如く。
淡々としながらも――何処か重く、想いを込める、ように。
「な、何をっ――するんだ?」
慌てて父がそれを問うと、礼華はピタリとその動作を止めた。
「何を――する?」
ポツリとした音で、支配した空間。
その中にあって、その言葉は――続く。
「じゃあ、聞かせて……貴方は私に……何を、させたの?」
凛と気高いその顔と裏腹に、礼華の瞳から涙が溢れた。