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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ

 長いのか短いのか、それすらも知らない――各々の人生にあって。

 人が進むべき方向(さき)に、迷うことが幾度あるだろうか。

 もしかしたら、存外――それは、少ない。


 殊に高校生という名の確固たる、それでいて微妙な立場の彼らには、まだそんな経験がなくともそれは不思議ではなかった。

 朝、目覚めたのなら、学校へと向かい。放課後となれば、何処へ寄り道をしようとも、結局は戻るべき場所へ帰るのみ。

 その生活の中では、進む道に迷う筈もなかった。

 こう言ってしまえば、そこに異論はあるものと思われ。彼らとて暫くしたなら、受験や就職などの進路を決する時は来るのだから。

 しかしながら、それらはその時が訪れることが決まっていて。既に幾つかある過程に倣うに過ぎないのだとしたら、容易ではないにせよ大きな迷いとは言い難いのかもしれなかった。

 そんな意味に、於いて――


「……」


 今、瀬山宗助は、進むべき道を見失いつつあった。


 夏の陽射しの照りつける、歩道橋。その上に立つと、頻りに上下に流れ行く自動車を眺めている。ふと音を耳にして視線を上げれば、それは斜めに横断する高架橋を滑る新幹線の地鳴り。


 宗助はそれまで、世界を狭いと感じていたのだと思う。だがそれを狭めていたのが自分自身だと気付いた時に、あらゆる場所に道は通じているのだと気がつく。

 それは当たり前のことのようであり、だがそれを肌で感じる時はなかなか訪れはしない。


 あの日――あのHRでの、告白。決してできないのだと感じていた、それを経た――今。


 糸が切れた凧のように、ふっと自由になった。そんな実感が、確かに宗助の中には――在るのだ。
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