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クラス ×イト
第3章 あこガれ 【山村佳奈】
この日は休み時間になると、私はその度にトイレに行った。別に出血とかしてるわけじゃないけど、何かモゾモゾとして落ち着かない気分。
「……」
個室を出ると、鏡の前で自分の顔をしばらく眺めた。鏡の中の顔は、別にいつもと変わらないんだけど……。
色んな染みがついたシーツは、朝の内に洗濯して乾かしてきている。親が見たら、変に思ったりするかな。
それにしても――礼華もあんまりじゃない。そりゃ、自分はとっくに経験してるんだろうけど、何もあんな言い方しなくたってさ……。
礼華にとって、私って――何なんなんだろ?
「はあ……」
ついそんなことを考え、ため息をついていた時。
「――!」
後ろに人が立っていることに、気がつく。
藍山栞――私は鏡越しに、その姿を見た。
そしたら――
「山村さん。どうかしたの?」
藍山さんは、私にそう訊ねる。
「は? べ、別に――なんで?」
いつも話しかけることなんてないのに、何でこんな時に限って。私は不愉快さを隠さずに、プイッと鏡から視線を外した。
「ちょっと、顔色が悪いみたいだから」
そう言われた時、礼華と同じように見透かされたように感じて。私は振り向くと、敵意を顕わにして藍山さんに言った。
「関係ないでしょ! 藍山さんと違って、私には色々あるのっ!」
言ってしまってから、私はハッと口を押える。いくらなんでも、言い過ぎ。彼女は私のこと、心配してくれただけかも。なのに……。
藍山さんは、全然その表情を変えずに――
「そうみたい、ね……」
そうポツリと言い残し、その場から去って行った。
「……」
今回、私が話したのは、ほんの一日の出来事。何かが大きく変わったようで、何も変わってないような一日。
けど――私はきっと、確実に変わり始めていたんだと思う。
【あこガれ――了】
「……」
個室を出ると、鏡の前で自分の顔をしばらく眺めた。鏡の中の顔は、別にいつもと変わらないんだけど……。
色んな染みがついたシーツは、朝の内に洗濯して乾かしてきている。親が見たら、変に思ったりするかな。
それにしても――礼華もあんまりじゃない。そりゃ、自分はとっくに経験してるんだろうけど、何もあんな言い方しなくたってさ……。
礼華にとって、私って――何なんなんだろ?
「はあ……」
ついそんなことを考え、ため息をついていた時。
「――!」
後ろに人が立っていることに、気がつく。
藍山栞――私は鏡越しに、その姿を見た。
そしたら――
「山村さん。どうかしたの?」
藍山さんは、私にそう訊ねる。
「は? べ、別に――なんで?」
いつも話しかけることなんてないのに、何でこんな時に限って。私は不愉快さを隠さずに、プイッと鏡から視線を外した。
「ちょっと、顔色が悪いみたいだから」
そう言われた時、礼華と同じように見透かされたように感じて。私は振り向くと、敵意を顕わにして藍山さんに言った。
「関係ないでしょ! 藍山さんと違って、私には色々あるのっ!」
言ってしまってから、私はハッと口を押える。いくらなんでも、言い過ぎ。彼女は私のこと、心配してくれただけかも。なのに……。
藍山さんは、全然その表情を変えずに――
「そうみたい、ね……」
そうポツリと言い残し、その場から去って行った。
「……」
今回、私が話したのは、ほんの一日の出来事。何かが大きく変わったようで、何も変わってないような一日。
けど――私はきっと、確実に変わり始めていたんだと思う。
【あこガれ――了】