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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
「私も……たぶん」
「たぶん……?」
「ごめんなさい。こんな、言い方……だけど」
はっきりと形を成さない、心。
でも、栞は応えたい自分が居るのだと、知ってる。
だから栞は、その一歩踏み出した。
「あ……」
思わず漏れたのは、英太の声。
両手で頬を包み、徐に顔を近づけて――
少し背伸びした、足先が――その唇を、彼の元へと届かせた。
触れて、重なる。
それが、栞から英太への、キス(こたえ)……。
二人の髪を靡かせ、吹き付けた風。それが止むまで、栞はその細やかな接触を、じっと感じていた。
そして、数秒の味を残し、静かにその瞬間が終わる。
「あ……藍山……さん?」
呆然と立ち尽くす、英太。
その瞳を一心に見つめ、栞は言う。
「私は今――乾くんと、進みたい。もう少し――先へ」
身体の中より湧き出る様な、何か。
今はそれに、栞は殉じる。
確かなものなんて、わからなくてもいい。この気持ちは何処までも、昂揚してゆくのだから――。
この先だって、きっと――。