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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
僕――乾英太が話しをするのは、これで二回目になる。
そんなことで唐突ではあるけども、この日は午後の授業でちょっとした騒ぎがあった。その結果として、僕の仲間――『D3』の去河要二が怪我をしてしまっている。
まあ、怪我と言っても大袈裟なものではなくて、自分で机に顔面を打ち付け鼻血を出しただけなんだけども……。
それでも一応は心配だから、僕は授業が終わると保健室に向かった。
そしたらそこには藍山さんもいて、僕は少し驚いていた。彼女がいる理由は保健委員だから、なのだけれども――。
要二と藍山さんは、何やら話し込んでいた様子で。僕にとってはそれが、とても意外に思えた。
「要二、大丈夫?」
保健室を覗き、僕がそう声をかけた時だった。
「じゃあ、これで」
藍山さんは話すのを止めて、椅子から立ち上がっている。
僕が聞いては、いけない話……? そう感じた僕は、少しだけ疎外感を覚えた。
そしたら、立ち去ろうとする彼女に、要二は言う。
「藍山――生徒と教師じゃなかったら、問題ないってことだよな」
「……?」
それを聞いた藍山さんは、不思議そうな顔をしていた。僕は目の前に立つ彼女の顔を、じっと観察。
そして、二人が何を話しているのか気になり――
「なに……二人、どうかしたの?」
僕は思わず、そう訊ねてゆく。
その瞬間――藍山さんは何かを言いたげに、僕の方を見ていて。僕は咄嗟に、その視線をかわした。
きっと僕がそんな風だから、いけなかったのだろう。扉の前に立ち尽くしていた僕に、藍山さんは微かに苛立ったようにして言った。
「別に、なんでも――私、行くから」
「あ、ごめん……」
僕は慌ててそこを退いて、彼女がその前を通り過ぎて行く。その瞬間にほのかに香る、彼女の匂い。それが僕にわかりきったことを、再確認させた。
僕はやっぱり――藍山さんが好きなんだ、と。
幾ら小説に書き綴ろうとも、僕のその想いを彼女は知らない。それでもいつか、彼女に伝えることができるのかな……。
ふとそんな風に、考えていたからだろう。
「――――てよ」
「え……?」
藍山さんが発したその言葉を、僕は聞き取ることができなかった。
そんなことで唐突ではあるけども、この日は午後の授業でちょっとした騒ぎがあった。その結果として、僕の仲間――『D3』の去河要二が怪我をしてしまっている。
まあ、怪我と言っても大袈裟なものではなくて、自分で机に顔面を打ち付け鼻血を出しただけなんだけども……。
それでも一応は心配だから、僕は授業が終わると保健室に向かった。
そしたらそこには藍山さんもいて、僕は少し驚いていた。彼女がいる理由は保健委員だから、なのだけれども――。
要二と藍山さんは、何やら話し込んでいた様子で。僕にとってはそれが、とても意外に思えた。
「要二、大丈夫?」
保健室を覗き、僕がそう声をかけた時だった。
「じゃあ、これで」
藍山さんは話すのを止めて、椅子から立ち上がっている。
僕が聞いては、いけない話……? そう感じた僕は、少しだけ疎外感を覚えた。
そしたら、立ち去ろうとする彼女に、要二は言う。
「藍山――生徒と教師じゃなかったら、問題ないってことだよな」
「……?」
それを聞いた藍山さんは、不思議そうな顔をしていた。僕は目の前に立つ彼女の顔を、じっと観察。
そして、二人が何を話しているのか気になり――
「なに……二人、どうかしたの?」
僕は思わず、そう訊ねてゆく。
その瞬間――藍山さんは何かを言いたげに、僕の方を見ていて。僕は咄嗟に、その視線をかわした。
きっと僕がそんな風だから、いけなかったのだろう。扉の前に立ち尽くしていた僕に、藍山さんは微かに苛立ったようにして言った。
「別に、なんでも――私、行くから」
「あ、ごめん……」
僕は慌ててそこを退いて、彼女がその前を通り過ぎて行く。その瞬間にほのかに香る、彼女の匂い。それが僕にわかりきったことを、再確認させた。
僕はやっぱり――藍山さんが好きなんだ、と。
幾ら小説に書き綴ろうとも、僕のその想いを彼女は知らない。それでもいつか、彼女に伝えることができるのかな……。
ふとそんな風に、考えていたからだろう。
「――――てよ」
「え……?」
藍山さんが発したその言葉を、僕は聞き取ることができなかった。