この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
 何て――言ったのかな?

 咄嗟に訊き返すこともできずに、藍山さんはそのまま保健室から去っていた。

 ううん、きっと大した意味で口にしたことじゃないのだろう。藍山さんが僕に伝えたいことなんて、あるとは思えない。

 伝えたいのは僕だけ。それができないから、ひたすらそのジレンマを小説にぶつけているのであって……。


「ハハ――お前、蛇に睨まれた蛙だな」

 両方の鼻の穴に綿を詰めている鼻声で、要二は僕のことを笑った。藍山さんを前にしてオドオドしてた僕を、滑稽に感じたみたい。

 少しムッとしたけど、文句は言えなかった。だって要二は、僕のできないことをしていたから……。

 僕が藍山さんのことを――そして、要二が佐倉先生を気にかけていることは、この前の昼休みに話して互いにわかっていた。

 対象は違っていても、少なくともその時点に於いて僕たちの居た場所は同じ。ちょっとだけ好きな人のことを匂わせたりして、僕はそれだけのことに無邪気に昂揚していたんだと思う。

 だけど要二はその想いを、既に相手に伝えていた。しかも授業の真っ最中、皆の前で――だ。だから今の要二には、僕を笑う権利があるのだろう。

 要二が藍山さんと保健室に行った後。教室には何とも言い難い、微妙な空気が流れていた。佐倉先生は授業を続けて、皆も表立って騒ごうとはしなかったけど。それでもヒソヒソと隣同士で話して、ほくそ笑むような人の姿は教室の所々に見ることができた。


 どうして人の真剣な気持ちが、そんなにも可笑しいのだろう?


 僕はその時の教室の雰囲気が、とても嫌いだった。 
/579ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ