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真実アイロニー【完結】
第10章 衝動的。
「小早川の、家に」
「……」
「……」
部屋がシンっと静まり返る。
どう声をかけようか、そう思っていたら彼女がそっと切った手首を覆う様に隠した。
それを見て、目を見張る。
「帰りたくないのか?」
「……」
ぎゅうっと手首を掴む手に力が入った様に見えた。
薄く色付いた唇が、微かに動く。
「……かえ、りたく…ない」
そう、彼女が紡いだ瞬間。
俺の感情が溢れて止まらなかった。
ぐいっと腕を引っ張って、彼女を自分の腕の中に収めるとなるべく声を抑えて話した。
「家に泊めて、何もしない自信がない」
「……」
「だから、送ろうとした。
だけど…、小早川からそう言われたら帰すなんて出来ない」
「……」
相変わらず、小早川は無反応だったけど、逃げる様な素振りは一切見せなかった。