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真実アイロニー【完結】
第5章 薄く色付いて行く。
そして、今月末。
俺と小早川さんは真面目に残った甲斐もあって、提出する絵を完成していた。
久嶋先生は授業では相変わらず描かないと、愚痴を溢していたけどどうにか俺がフォローしておいた。
その理由はちゃんとわかってるから。
美術室にいた俺と小早川さん。
完成した絵をまじまじと見つめた後、一度背伸びをする。
俺も久々に絵画完成させたよ。
芸術センスってのが俺にはないから、専ら専攻は理数系。
「お疲れ様、小早川さん」
「いえ」
「よく一ヶ月近く頑張ったよね。予定とかなかった?
毎日の様に残しちゃってたけど」
「家に帰っても一人なんで、私は別に」
「一人?」
「はい、一人です。正確には伯母がいますけど」
「そうなんだ。少しでも楽しめたかな」
肯定の言葉なんて返って来るとは思ってなかったけど。
一人だってのは知らなかった。
仕事で帰宅が遅いのかな。
それにしても、両親はいないのか。
緊急連絡先も確かに名字が違っていた。
不思議に思ってたけど、そうか、それでだったんだ。