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真実アイロニー【完結】
第5章 薄く色付いて行く。
「私に構って来るとこですかね」
……。
それに、何も言えなかった。
「どんなに冷たい態度でいても、先生は毎日の様に必ず話しかけて来た。
おかしな人だなって最初は思いました」
手に力が入って、折角完成したばかりの画用紙にいくつもの皺が刻まれた。
「本当に、おかしな人です。先生は」
そうやって、少しだけ目を細める小早川さんは。
やっぱり、どこか、何かを諦めていた。
「……なあ、教えてくれないか」
「え?」
キョトンとした顔をする彼女に、俺は続けた。
「小早川さんに何があったのか、教えてくれないか」
「……」
一気に彼女の瞳から温度が消え失せる。
初めて見た時の様な、無表情の顔。
久しぶりに見たかもしれない。