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第6章 目が離せない。

「痛かったんだろ？この傷よりもきっと、周りの変化が」

「……」

「当たり前にいた周りが自分から離れてしまって」

「……何で」

「え」

「何で先生が泣いてるの」


自分の手を目元へと持っていく。
確かにそこからは涙が溢れていて、流した意味がわからない涙があって。



「うわ、本当だ。俺、何泣いてるんだろ」


慌てて袖口でその涙を拭った。
だけど、それを小早川が制止する。


その、細い腕を俺に伸ばしてそっと頬へと触れた。


彼女の指が涙の線を撫でて行く。



「私が泣けないから、代わりに泣いてくれたんだね。先生」


やっぱり、小早川はどこか無表情で、きっと我慢して我慢してこうなってしまったんだって思ったら苦しくて。

無邪気に泣きじゃくりたい筈なのに。
周りから人がいなくなったのに。


それでも、彼女はたった一人を求めていた。


“何か”が降って来ないか。


琥珀君が降って来ないか。
彼が自分の前に現れないか。


それだけを求めていたんだ。