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愛しては、ならない
第41章 更に抉られる、傷痕②
「剛さん、その仕事はもういいからこっちへ来てお茶を飲みましょう、生徒さんのお宅から頂いたお菓子があるの」
「そうだぞ――剛、今日はもうゆっくりしなさい」
作業に集中していた俺は、ドアから顔をひょっこり出す花野と祖父に驚くが、笑って頭を下げた。
「すいません。
もう少しできりの良い所なんで、そこまでやったら行きますから」
「そう?早くおいでなさいな」
「本当に剛は真面目だな――はっはっは……祐樹にもその半分くらい真面目さがあればねえ……」
「じゃあ、待ってるわね」
二人はニコニコ笑ってドアを閉めた。
俺は溜め息をひとつついて、纏めた楽譜をホチキスで留めていく。
祖母と祖父のところに身を寄せて三日経とうとする。
俺は学校を欠席して花野の音楽教室の雑用などを手伝ったり、祖父の趣味の盆栽や書道、空手等を遊び半分で教わったりして過ごしていた。