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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
「おお――いいですよ、上手上手」
森本が、柵に腕を掛けて写真を撮りながら歓声を送ってくるが、私は恥ずかしくて仕方がない。
だが周りとぶつからないようにハンドルをきるので精一杯で、しまいには夢中になっていた。
音楽が止み、パンダも動かなくなると私はある種の達成感と疲労で何秒か放心していたが、スタッフのおじさんに
「あのう、次の回の人が乗りますので……」
と声を掛けられて我に返った。
「菊野さん――大丈夫?自分で降りれますか?」
「……っ……」
大きな声で彼が呼ぶと、周囲の人達の視線が刺さる。
華やかな顔立ちで、人形のように手足が長い彼はやはり何処に居ても目立ってしまう。
私はスカートに注意しながら降りるが、彼に拍手されながら盛大に出迎えられ、顔から火が出そうだった。