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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行


彼女の唇が離れ、頬を掠め、耳に移動する。



「言っておくけど、男の子を襲うの、西本君が初めてだからね」



言葉を覚えたての小さな女の子が喋る様な夕夏の声にゾクリとし、瞑っていた瞼を開くと、ひたむきな瞳が潤み、水が溢れそうになっているのが分かった。



「みさ……夕夏?」

「や……やっぱり怖い」

「――?」

「西本君と二人きりになれて、チャンスだって思って押し倒したまでは良かったけど……っ私……っ」



彼女はつぶらな瞳を瞬きさせ、とうとう堪えきれない涙が俺の頬に落ちた。



「わ……私……した事……無いんだもんっ」

「え……!?」



目を丸くすると、彼女の張り手が頬に飛んできた。




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