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愛しては、ならない
第47章 埋まらない溝
「晴香……っ」
森本は、彼女の手を首から引き剥がそうと試みるが、細腕でか弱い筈のその手首は驚異的な力で離れない。
時には柔く真綿を絞める如く、かと思えば彼の皮膚が白くなるほどの力を指先に込める。
危険を感じた森本は、思いきり彼女を蹴り上げてやろうかという考えが一瞬頭を掠めるが、彼女の瞳に涙が浮かぶのを見て、躊躇った。
その唇が微かに震えてか細く言う。
「彰も……私よりっ……菊野さんの方が……っ……いいの……?」
「晴……香」
彼女は、彼の白い皮膚が鬱血するのを見てハッと我にかえり、首から手を離し胸にしがみついた。
「彰っ……ごめんなさいっ……私――」
「晴香……もう……止めよう」
彼は咳をこらえながら小さく言った。