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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

「……これで少しは目立たないかな……」
私は、病院の洗面所で顔を洗った。特に泣き腫らした目の回りは特に念入りに。
涙の痕は消えたように見えたが、やはり瞼が厚ぼったい。
鏡に映った自分の顔を見て私は愕然とする。
「うわ……なんか……酷いかも」
軽く凹むが、いつまでも落ち込んだ顔をしている訳にもいかなかった。
病室には悟志と真歩が居る。心配をかけてはいけない。
悟志は、長い昏睡状態から目覚めたのだが、何か異常が顕れていないか、明日から検査が始まる。
倒れて入院した時、もし意識を取り戻しても、一部記憶の消失があるかも知れない、という事を医師から聞かされてはいたがまさか本当になるとは思っていなかった。
悟志は剛の事以外は全部分かっているし、覚えていた。
剛に関する全ての事だけを、そっくりそのまま忘れてしまったのだ。

