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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と

「菊野……ごめんね」
「んっ」
耳元で囁かれてくすぐったくて声を漏らしてしまうが、悟志を刺激してしまったらどうしよう、と思った。
案の定、彼は熱をもった瞳で私を見詰めて、頬に触れてくる。
唇が震えるのを止めたいのに、身体はいうことを聞いてくれない。
そんな私を見て悟志は悲しそうに顔を歪めた。
「本当にすまないね……僕が……あの剛って子の事を忘れてしまって……」
「え……」
彼は本気で反省している様だった。
私が震えているのは、悟志が一部の記憶を無くしたせいだと思っているらしい。
掌で優しく頬を包みこみ、今にも泣きそうな顔をしてもう一度言う。
「ごめん、本当にごめん」

