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愛しては、ならない
第51章 ナイトメアの後で
『剛……さあ、やるがいい……僕に抱かれる菊野を見て猛らせながら……自分を慰めてみなさい……っ』
『ああ――っ……悟志さ……好き……好きよ……ああん!』
彼女が他の男に抱かれているという事実よりも、他の男に恋の言葉を告げるのを目の当たりにした衝撃は、俺の身体を真っ二つにするかの様に激烈だった。
俺を好きだと、愛してると言ったじゃないか……
同じその唇で、悟志に同じ事を言うのか……?
その蕩ける程に甘い声で、可憐な瞳を潤ませて見詰めて――
嘘だろう?これは何かの間違いなんだろう?
そう言ってくれ――菊野――
『間違いは、お前の存在そのものなんだよ』
また違う人物の声に、俺の身体は凍り付いた。
冷たい眼差しが目の前にあり、首に手を掛けられている。
それは、俺の母親だった。
底冷えのする瞳で俺を見て――その中には、何の感情も浮かんでいない――
俺の首を強く締め上げる。
『お前は要らないんだよ……お前なんかが、普通に幸せになれるもんか……』
『く……離せ……っ』
もがき、その手を掴み退けようとした瞬間、母の姿は菊野にすり変わっていた。
菊野は俺の首をじわじわと締め付けながら、微笑む。
だがその花弁のような唇が放った言葉は――
『……貴方は……もう……要らないの……』