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愛しては、ならない
第54章 四年後
「ただいま――」
祐樹は背中に重いナップザックをしょって、学校から持ち帰った沢山の荷物を両手に抱え、顎でインターホンを押す。
菊野が見たら行儀が悪い、と叱るだろうけれど、両手が塞がっているのだから仕方がない。
何秒か待つが、応答も、開く気配もなく眉をひそめる。
首をかしげ、あっと声を上げ、舌打ちしながら荷物を降ろし、ポケットから鍵を出した。
「そう言えば今日は母さんも父さんも結婚式で帰って来ないんだっけ……朝家を出る時には覚えてたのにな~」
ひとりごちながら、靴を脱ぎ玄関にドサッと荷物を置くと、学生服のシャツのボタンやズボンのベルトを外して放り投げ、トランクス一枚の姿で扇風機の前に座り、スイッチを強に入れた。
心地好い風が顔と髪を撫でて、思わず背伸びをする。
「は――!明日から夏休みだし、今夜は俺だけだし、涼しいし~
言うことないね――!」