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愛しては、ならない
第54章 四年後
女と目が合ってしまい、祐樹は取り敢えず曖昧に笑うしか無かったが、女は一瞬目を見開いてから、憎々しげに
「――その顔にはもう懲り懲りだわ!優しそうに見えて、まるで悪魔じゃないの――!!」
と言い捨てて、肩をいからせて大股で歩いて行ってしまった。
唖然とその後ろ姿を見て、「おいおい、何で俺が怒られなくちゃならないのっ」と呟いた時に、後ろから低い涼やかな声が祐樹を呼んだ。
「――来るときには電話しろって言ってるだろ」
振り向くと、長い前髪を少し乱して、パジャマのシャツのボタンが全て開いたままの剛が立っていた。
胸元には、恐らく女が付けたと思われるキスマークが付いていて、祐樹はマジマジと見詰めてしまう。
剛はその視線に全く臆する事もなく、気だるく色気を醸し出す仕草――本人は全く意識していないところが憎たらしいが――
真っ直ぐな前髪を長い指で後ろへ流して小さな溜め息を吐いた。
「まあ、お陰で追っ払えたから助かったけどな」