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愛しては、ならない
第57章 二十歳の同窓会②
「剛君……元気で」
清崎の声が聞こえ、俺は一瞬だけ振り返った。
彼女は森本と寄り添い、笑顔で手を振っている。俺も手を振り返すと森本が眩しい程の笑顔を向けている。
まるで、『何も心配要らない』とでも言いそうな顔だった。
――能天気な奴――
俺は苦笑いを彼に向けてから、駅へ向かい全速力で駆け出す。
『ゴチャゴチャ言ってるんだったら、ぶつかってみなよ』
清崎の言葉が胸に刺さったまま、俺を急き立てる。
ぶつかってみたところで、菊野は俺の物にはならない――そんな事は承知している。
だが、彼女のいう通りだ。何処かで区切りを付けなければ、ずっと悶々として過ごさなければならない。
今度もまた拒絶されるかも知れない。俺が思っている程に、彼女は俺の事を思っていないのかも知れない。
だが、そんな事はどうでもいい。
俺は……俺は……
貴女に会いたいんだ――
アスファルトの水溜まりが跳ねて飛沫を上げるのも構わずに、俺は走った。
今度こそ……今度こそ……貴女の真実の気持ちを教えてくれ……菊野――