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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋
無意識に、私は彼の背中に腕を廻して小さく「怖い」と呟いていたが、剛が低く笑って私を宥めるように掌で頭を撫でて言う。
「何も怖くない………菊野の怖さも……悲しさも……全部俺が今から忘れさせてやるから……」
「……剛さ」
彼の掌が、髪から背中へ、首筋、胸元へと降りていく。
「――っ」
思わず瞼を閉じる私に、剛は少し上擦る声で囁いた。
「菊野……俺を見て」
勇気を出して少しずつ瞼を開いていく。
彼の澄んだ二つの瞳は、暗闇の中でも光を放ち、私を更に恋に突き落とす。
彼の指が巧みな動きで私を少しずつ生まれたままの姿にしていくのを、私は咎める事も抵抗も出来ず、彼の首に腕を廻してその涼やかな瞳を見詰めていた。
巻き込まれていく。落ちていく。
恋の嵐の中へ。
この恋には、嵐の中を翔んで行ける翼は与えられない。
身体がバラバラになってしまいそうな凄まじい風に翻弄されながら、お互いを抱き締めあって耐えるしかない。
それが、私と彼の恋なのだ。
今度こそ、赦されはしないだろう。この先に私達を待つのは何なのか。
破滅なのか、それとも――
私の思考はそこで途切れた。
剛の熱くたぎった獣が蕾を割って入り込み、私を烈しく揺さぶり始めた――