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愛しては、ならない
第65章 BEDTIME STORIES
 菊野が真っ赤になった。

「……そんなに見られてると……緊張して身体に変な力が入るし……筋肉痛と不整脈になりそう……」
「ぶっ」

 剛は吹き出し、彼女の胸に顔を埋めてくつくつ笑った。

「やっ……くすぐったいってば!剛さんてばーー」
「ーー菊野」

 剛はふと笑うのをやめて、菊野の顎を持ち上げた。
 菊野の頬がまた鮮やかに染まる。

「言うことを聞いてくれるのなら……ひとつだけ」
「なあに……?」

 少しの不安とときめきで胸一杯になった菊野は、掠れた声できく。
 剛の切れ長の瞳が一瞬歪んだ。

「俺のーー」

 きらきらした黒目だ。と思った。好きな絵本を読んでもらっている時の幼い子供のような。俺の願いはひとつしかない。あなたに、ずっとそばにいて欲しいーーそれだけだ。
 でも、かなわないことくらい知っている。
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