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愛しては、ならない
第1章 prologue
また同じ夢を見た。
夢の中のあの女(ひと)は幼い俺に何度もこんな風に言って聞かせた。
けれど現実では勿論、夢の中でさえ俺はあの人を
"ママ"
と呼ぶ事は無かった。
どうしても呼べなかった……
あの女(ひと)が嫌いだったあの女の名前。
俺にはとても美しい名前に思えていた。
今でもその名前を思い浮かべるだけで、胸には甘く苦い痛みが走る。
二十歳のあの夏の夜から十年が経つ。
……菊野(きくの)
貴女は、あの夜の出来事を、まだ覚えて居るのだろうか――