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愛しては、ならない
第25章 離したくない
菊野の身体を見るのは初めてではない。
忘れもしないあの夜。
悟志に突き上げられる菊野をドアの隙間から盗み見た。
快感に身を捩り甘い声で啼き、その乳房が揺れて形を変えるのを――
悟志の逞しい手に腰を撫でられながら突かれて達するのを――
男女の結合部が音を立て、滴が溢れるのを――
この目に、網膜に、身体の奥に焼き付いている。
だが、今目の前に居る貴女は――
今まで見た姿の中で、最も美しい。
俺の、俺の菊野――
今は、俺だけの恋人だ――
誰が何と言おうと。
離さない……
「見ちゃダメっ……」
菊野が、顔を逸らして泣きそうな声で呟く。
いや、多分また泣くのだろう。
俺は、ズボンの中でスマホが振動しているのに気づかない振りをした。
この瞬(とき)を、誰にも邪魔されたくなかった。
何も考えたくない。何もわからない。
これから、俺と貴女がどうなるか等、知った事ではない。
ただ、今だけは愛しい貴女を抱き締めて居たい。
世界中の時を止めたい、と強く願い、その柔らかい頬に口付けた――