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愛しては、ならない
第30章 彼しか見えない

水を出しっぱなしにして、シンクを見おろした瞬間、涙が堕ちた。
私は確信を以て小さく呟いた。
「真歩は……悟志さんを……」
真歩が悟志を見詰める切ない綺麗な眼差しは、恋する女のものだ。
今なら分かる。
恋を知らずに結婚した私だけど、今ならそれが分かる。
剛に恋してしまった今なら、真歩の潤んだ瞳の理由(わけ)がはっきりと分かる。
――真歩は、今までどんな気持ちでいたの?
一体、何時(いつ)からそうだったの?
どんな思いで、私と悟志を見ていたの……?
父親の様にしか思えない、と彼の事を話す私を、どんな風に思って――?

