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愛しては、ならない
第34章 恋の短夜(みじかよ)
まだ動いていないうちから俺は菊野に締め付けられ、暫しの間爆ぜそうになるのを口を結んで耐えた。
彼女が熱を帯びた瞳で見詰めている。
俺もその熱を真っ直ぐに受け止めて、彼女の細い手を取り甲に口付ける。
快感の渦に呑まれる前に、彼女に言いたい事があった。
彼女の瞳はまた潤んで溢れそうになっていた。
――俺も、泣いてしまいそうだ。
貴女を好きで仕方が無くて、それで泣くなんて……
こんな事が自分に起こるなど、思いもしなかった。貴女に逢うまでは。
「もし……」
「?」
彼女は首を小さく傾げた。
俺はひと呼吸置いて続ける。
「もし……悟志さんが……このまま……目覚めなかったら……」
「――」
菊野の頬が、固く強ばった。