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愛しては、ならない
第34章 恋の短夜(みじかよ)
「……好きよ……愛してるわ……」
白く染まる視界の中で、聖母のように微笑む菊野が涙を溢す。
――その涙は、幸せな方の涙なんだろう?
涙は、悲しいものだけじゃ無いんだと教えてくれたのは貴女だった。
俺と愛し合って、抱き合って、幸せだと思って泣いているんだろう?
そうに決まってる……
そうだろう?菊野?
俺は、薄れ行く意識の中で、彼女にそう尋ねた。
だが、彼女は答えずただ笑って、柔らかい指で眠りに堕ちようとする俺の髪を撫でてキスした。
それは眠りの魔法のように、俺を深い夢の中へと誘っていった。