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刑事とJK
第28章 道を示してくれたもの
一筋の汗が顔を伝う
斉藤の集中力はただ、
男にだけ注がれていた
男の放つ気
それはまるで日本刀のように鋭く、
油断したら一瞬で斬りつけられてしまう
男は手を上げた
「お前、面白いな」
「え」
男の拍子抜けのセリフに、
斉藤は緊張の糸が切れ、
その場にペタッと座り込んだ
「パン、食えよ」
男は地面に落ちているパンを斉藤に渡した
斉藤は急に腹が減ってきて、
袋を開け、夢中でパンを貪り食った
男は横に座ってそれを見ていた
斉藤は一瞬で食べ終えた
「…うめぇ…」
食べ物がここまで美味しく感じたのは
初めてだった
「…うめぇ、な…」
斉藤は、もう一度言った
「お前、何かやってたのか?
何か組み手に関わることを…」
「…ちょっとだけ…」
「ふっ、さっきのはちょっとってレベルじゃないな」
斉藤は男の顔を見た
「オッサンは…何かしてんのか…?」
「俺は、刑事やってる」
「刑事!!?」
斉藤は驚いた
刑事が、盗みをした自分を見逃して、
さらにはそれを買って与えただなんて…
「なんで…」
「さっきも言っただろ?
お前は、自分がしてしまったことの重大さをしっかり理解していた。
もしお前があの時抵抗してたら、
俺は迷わず警察に突き出していた」
「…」
斉藤は黙った
「お前、名前は?」
「斉藤…」
「俺は長谷川だ」
長谷川は手を出した
斉藤も手を出し、握手した
「…んだ、これ…?」
「握手だ」
「んなことはわかってる」
「斉藤、お前がこれから、
まっとうに生きていくことを願って」
長谷川は真っすぐ斉藤を見た
たった今、知り合っただけなのに
その目は斉藤に何かを期待していた目だった