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刑事とJK
第5章 小犬
「なんだ、傘あんじゃねぇか
そんだけ濡れたらさすがに風邪引くぞ」
少し笑いながら
落ちている傘を拾おうとしたときに
気づいた
傘の下には、
あの小犬がいた
前見たときよりも
雨や土でどろどろになった小犬は
傘の下ではぴくりとも動かなかった
ひとつの物体が横になって
そこに落ちていたんだ
オレは腹の奥から
変な
もやもやした物が、心臓を通り
喉を通り
口から
ああ
という言葉になって出てきたのがわかった
オレは立ち上がり、
ゆうひの方を向いた
ゆうひはオレを通り越して
傘の下の犬だけをじっと見ていた
その大きな瞳を
もっと大きく開いて
雨が目に入ることも構わずに…
オレは、自分の傘にゆうひを入れてやった
なんて声をかけたらいいのかわからずに
ずっと黙っていた
『…許せない』
先に沈黙を破ったのは
ゆうひだった
『…許せない…許せない…
あたし絶対許さない…!!』
ゆうひはバッとオレの顔を見た
『小犬が何をしたって言うの!?
一生懸命生きていたのに…!!』
オレの胸ぐらを掴み、
強く揺すった
『あいつらが殺したんだ!!
あいつらのせいだ!!
あいつらと…あたしの…』
掴んでいた手の力が
緩んだ
『…あたしの…せいだぁ…』
その悲痛な声に堪えられなかった
その今にも崩れて消えてしまいそうな表情を
見ていられなかった
オレは傘を落とし
ちから一杯抱きしめた
この悲しみを押し潰してしまうほど
抱きしめた