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呟きたい
第10章 ホストについて②

 「こんばんは」

 「こーんばんは!」

 「元気だね、瑞希」

 「類沢さん……俺今日いいことあったんですよ!」

 「うん?」

 「一回も滑らずに氷をトングで挟めたんですよー」

 「ふっ……」

 「なんで笑うんですか」

 「かわいいなぁって」

 「なっ……っ、初めてだったんですよ!」

 「今度は自分の客の時に出来るようにね」

 「はい……」

 「今日はなにかな」

 「俺、ここは類沢さんの独壇場だと思うんですが」

 「瑞希も学んで語ればいいよ」

 「はぁ」

 「返事」

 「はい!」

 「あ、簡単な質問だ。僕が呟いたS券とは何かって」

 「呟いてましたね」

 「業界用語なのかな? 初めてホストに来た客のことを呼ぶんだよ。大抵問題起こすのはS券だからね」

 「へえ。なんでSなんですか?」

 「……なんでかな」

 「ええ!」

 「昔ね、券が無ければ入れなくて、その券のことを指していたらしい」

 「なるほど」

 「次は瑞希が読んだら?」

 「はい。えっと……ホストって派閥は実際どう動いているのか。現に類沢さんの派閥一回も出て来ていない、と」

 「あー。そうだね。勝手についてきたメンバーには興味がないから」

 「長い付き合いとかいないんですか?」

 「一人……いたかなぁ」

 「え?」

 「ちょっと色々あって、辞めちゃったけどね」

 「そうなんですね……それで思い出したんですけど、ホストって簡単に辞められるんですか?」

 「裏に頼らない有名店か、名もない小さなホストならね」

 「……シエラは?」

 「この話はここまで」

 「類沢さん!」

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