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呟きたい
第18章 台詞について①
「生徒の俺も、家族の死を経験してるじゃないですか」
「だったね」
「なんか……近しい人の死を描いていた今までと違って、こう……他人が簡単に殺される世界って違和感ありますよね」
「もちろんその背景にはハルの姉、道化だっけ。その存在があるとは思うけどね」
「こんなこというのもなんですけど……道化師の世界は怖いですが少し惹かれてしまう不思議な雰囲気がありません?」
「サイレントヒルみたいな?」
「それです」
「好きだもんね。確かに歌舞伎町とあの世界は全然違うよね。強いて言うならオペラの空間だけは似ているかもしれない」
「聖域じゃないですか」
「そう。聖域」
「えっ……」
「あの道化師の世界は片桐ちゃんの聖域。普段は決して見せない自分の中身のまとまりつかないドロドロを曝け出しているんだと思うよ」
「でも生徒の俺と思春期の椎名が自分のモデルだって云ってたじゃないですか、サイトの方で」
「云ってたね」
「つまりその三人が中身ってことでしょ。なのにハルと二人は似ても似つかなくないですか」
「そこなんだよね。どちらかというと表と裏」
「表と裏……?」
「瑞希だって下手すれば雅樹を壊しかねなかった。面白いことに椎名も彼氏である雅樹を狂わせ続けてる」
「あ……本当だ。二人の接点って雅樹ですね」
「くく……あの西河南の兄である雅樹をだよ? 十分二人にも危ういところがあるんだろうね」
「ちょっと待ってください。じゃあ、ハルさんにも俺や椎名に似ている場所があるってことでしょうか」
「……んー」
「なんで誤魔化すんですか」
「そこはほら、皆の眼で確かめてほしいでしょ」
「そう、ですけど」