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セルフヌード
第5章 少女と被虐

* * * * * * *


『良くんへ。
 なつみに会ってきます。今日は帰れません。
 お味噌汁も食べてね^^』


 昨晩、良が帰ると部屋の明かりは消えていた。

 テーブルに、一筆箋と野菜炒め、ベーコンを敷いた目玉焼き、それから味噌汁と炊きたてのご飯が用意してあった。



 朝食を終えて、良はスマートフォンをスワイプする。

 美優からの連絡はない。

 ゴールデンウィークの後半から、美優の様子が変わっていた。
 あれだけつきっきりだったなつみとは一日も合わず、避けていたのではなかったか。喧嘩でもしていたのかも知れない。久々に会いに行ったところを見ると、解決したのだろう。良人として喜んでやるところだ。


 漠然とした喪失感が、良を襲う。


 学生の時分は目立たなかった、美優はさしずめ日陰に咲く花だった。

 結婚して九年。変わらなかった。
 九年経って、何かが変わった。人間界に怯えていた小動物は、明るく色気づくことを覚え、おりふし目を合わせらなくなるまで見違えた。



 なつみは、美優の友人だ。良が昼間、美優の側にいてやれない分、少しでもあの優しい家内の気晴らしに付き合ってくれる親切な人。


 愛するということは、何故、時に愛とは真逆の感情に走るのか。
 結婚したとて美優は美優だ。個人に個人は桎梏出来ない。


『美優お帰り。
 味噌汁美味かった。美優ありあわせ料理相変わらず上手いな〜。(褒めてんだよ♡)』


 ネコかイヌか、自分でも何が描きたかったのかはっきりしないイラストを添えて、良はペンを鞄に仕舞った。
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