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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第10章 盗賊髭切の正体
 小平太が薫子に一歩近づいた時、涼やかな声が凜として響いた。いつしか正面の扉が開いていた。
「そこまでだ」
 命令し慣れた者だけが持つ圧倒的な存在感を放ちながら、帝がゆっくりと歩いてくる。その背後から検非違使や配下の兵たちがなだれ込んで、一瞬にしてその場を取り囲んだ。
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