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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第12章 誤解の始まり
 見舞に来たばかりにも聞いた科白を通嗣はまた繰り返す。
 帝は何も言わずに立ち上がった。先刻、通嗣が束の間見せた肉親の情はかき消え、最早、自分たちは祖父と孫ではなく、敵対する天皇と藤原家の長になり果てていた。実の祖父と孫でありながら利害を相反し対立しなければならないとは運命の皮肉としか言えない。
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