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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第12章 誤解の始まり
 が、この頃には既に尚侍の役職は名前だけのもの、つまり形骸化しており、実質的な仕事はなく、女御や更衣に準ずる天皇の妾妃、つまりその主な務めは天皇の寝所に伺候することであった。
 もっとも、当人の薫子にはその自覚はまったくない。一応、妃に準ずる立場であるとの認識はあるものの、あくまでも本人は後宮で働く仕事を持つ女官のつもりで、帝の寵姫だという自覚は皆無だ。その辺りの意識はどうもズレているとしか言い様がない。
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