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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
「おい、薫子ちゃん、止めろっ」 
 小間物屋の声が背後で聞こえたような気がした。薫子が子どもの方へと一歩踏み出した瞬間、いずこからともなく一人の男が現れた。颯爽と登場した男は子どもを自らの腕に抱き込んで地面を転がった。
 見事なまでに鮮やかな動きであった。まさに間一髪のところで、暴れ馬は二人の脇を駆け抜けていった。
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