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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 父は薫子が亡くなった母に生き写しだというけれど、どう見ても鏡に映じる顔は平凡そのものの器量だ。酔芙蓉の花を愛した母は花のとおり、儚い一生を生きたひとでもあった。
 母が亡くなってから、父がここに酔芙蓉を植えさせたことを継母はどう思っているのか? 死してもなお良人の心を捉えて離さぬ他し女を許せるはずがない。ゆえに、一人の女として見た時、亡くなった母を恨む継母を薫子は憎むことはできなかった。
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