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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 廊下には異母姉付きの女房近江が待っていた。三十ほどのふっくらとした気立ての良い女である。先に北ノ方である継母が北ノ対に戻るのを見送ってから、近江が小声で囁いた。
「また、何か嫌みを言われたのですか?」
「まあ、ね」
 と、近江の顔に翳が落ちた。
「北ノ方さまのご機嫌が悪いのも仕方のないことではあるのです」
 刹那、胸騒ぎが起こった。
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