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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第15章 攫われた姫君
 薫子は姉が弟にするように慈愛のこもった手つきで帝の背をそっと撫でた。
 帝の懊悩は相当に深いものだ。けれど、この男が王者としての道を歩むのであれば、外戚である藤原氏、引いてはその代表である外祖父通嗣とは遅かれ早かれ正面対決は避けられないことであったに違いない。
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