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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
「今、紫陽花がとても綺麗なのよ」
 姉が上半身を起こそうとするのに、部屋の隅に控えていた近江が近寄ってくる。それを制して、薫子が言った。
「ご覧になりますか?」
「私を連れていってくれる? 薫子」
「はい。姉上のお望みであれば、何なりと」
 薫子は姉を脇から支えた。立ち上がった姉は歩き始めたばかりの幼子のように覚束無い足取りで一歩一歩前に進む。
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