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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 都育ちの薫子は海を見たことはない。姉は継母に連れられて、何度か琵琶湖を見たことがあるのだが、薫子は連れていって貰えなかった。
「薫子は海を見たことはあって?」
「済みません、私はないのです」
 いつもなら薫子が琵琶湖見物に行かなかったことを思い出させるような姉ではないのだが、やはり体調のせいで常とは違うのかもしれない。
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