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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 回廊を隔てた庭は蒼色に染まった紫陽花で埋め尽くされている。小さな星形の花が集まった手鞠のような丸いふっくらとした形が愛らしい。
 この屋敷で大姫の奏子を〝紫陽花の君〟、二の姫の薫子を〝芙蓉の君〟と呼ぶ所以は、それぞれの姫君の部屋前に植わった花の名前だった。
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