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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第4章 入内の勅命
「父上」
 愕いた薫子は立ち上がり、父を出迎える。
 父も薫子もまだ服喪期間とて、俗に〝藤衣〟と呼ばれる鈍色の喪服であった。
 姉のお付きであった近江は自ら望んで薫子仕えとなった。その近江が静々と白湯と高坏に盛った干菓子を運んでくる。万事を心得た近江はそのまま御簾の外に出て渡殿に控えた。
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